| (1) | 急勾配中の急カーブ出口など線路地形 |
| (2) | 停止状態の車輪にかかる荷重(輪重)のアンバランス |
| (3) | 空気ばねの調整、動作状況などの不具合 |
| (4) | 台車の設計、組立、調整の不具合 |
| (5) | 車輪のレール接触面の形状、左右のずれなど |
| (6) | レールの高低差、幅、ゆがみなど |
| (7) | レールの研磨状態 |
| (8) | 塗油器の動作状況や油の成分の影響 |
| (9) | 脱線時の速度やブレーキのかけ方などの運転パターン |
| (10) | 車体の剛性、ねじれ、連結器の影響 |
| (1) | 事故調は「明確に否定できる場合を除き、推定できる要因を広く集めた。今のところ、それぞれの可能性に大小はない」としている。通常、脱線の原因となるはずの車輪の欠損、レールの欠損等の要因が挙げられなかったのは、事故直後の調査によって、これら外観で直ちに判明する欠陥は発見されなかったためであろう。 |
| (2) | 脱線は、車輪がレールを外側に押しつける力(横圧)と、車輪がレールを上から下に押しつける力(輪重)の比で、起こり易さが定まる。そして、車輪フランジとレール側面との間の摩擦係数の大小が、この起こり易さをさらに増加させる。脱線を引き起こす直接要因はこれで全てである。あとは、なぜ横圧が大きくなるのか、輪重抜けが発生するのか、摩擦係数が大きくなってしまうのかという問題となる。 |
| (3) | 事故調が挙げた10の要因は、その意味で、全て横圧、輪重、摩擦係数に関するものである。それゆえこれら要因は全て事故を引き起こした可能性があり、もっともなリストアップだと考えられる。 |
| (1) | 「急勾配中の急カーブ出口など線路地形」については、S字カーブの入口・出口における緩和曲線、カント逓減率の実際の測定値。勾配も上昇、平坦、下降となっているはずで、それらの実際の測定値が必要。 |
| (2) | 「停止状態の車輪にかかる荷重(輪重)のアンバランス」については、停止状態に限定せず、低速走行中の輪重抜けについてのシミュレーションおよび実験が必要。ただこれを実際に実験にて求めるのは実はかなり難しい。というわけは、輪重抜けは、高さ調整弁、差圧弁等、工学でいう非線形要素を含むので、多くの回数の実験を積み重ねないと起こり得る全ての状態を試験したことにならないという理由のためである。 |
| (3) | 「空気ばねの調整、動作状況などの不具合」については、特に4つの空気ばねに付属する高さ調整弁のレバーの調整、高さ調整弁の上下不感帯設定、時間遅れ設定値、差圧弁動作圧等の特性が精査されるべきである。 |
| (4) | 「台車の設計、組立、調整の不具合」については、車軸軸箱を前後方向に支えるばね(ゴム)剛性、軸ばねの高さ調整、車軸取り付けの平行度等の評価が必要である。 |
| (5) | 「車輪のレール接触面の形状、左右のずれなど」については、車輪のレール接触面(車輪踏面)の形状は重要である。 |
| (6) | 「レールの高低差、幅、ゆがみなど」も大変重要な要因である。ただ事故後、線路をはずしてしまっているので、事故当時のレール状態がどれだけ再現できるかがポイント。 |
| (7) | レールの研磨状態 |
| (8) | 塗油器の動作状況や油の成分の影響 |
| (9) | 「脱線時の速度やブレーキのかけ方などの運転パターン」も脱線の要因として重要である。運転パターンによって横圧の発生、輪重抜けの発生に影響を与えるからである。 |
| (10) | 「車体の剛性、ねじれ、連結器の影響」も横圧、輪重抜けの発生に影響を与える。 |
| (1) | 地下鉄日比谷線事故は、事故調の力が試される事案となった。 |
| (2) | 事故調は、信楽高原鉄道事故のあと、遺族会の強い働きかけがあってやっとできあがった組織である。ただ当初の目標に比べ、権限、予算、組織いずれも低いものに留められてしまった経過もある |
| (3) | 事故調は、事故後、事故を解析するに重要な部品等は全て警察に押収されてしまい、今後実物車輌を事故現場を走行させて試験をするために、事故車の台車を返還してくれと、警察に申し込まなければならいような状態にある。米国の事故調査委員会(NTSB)が、免責特権まで持って事故原因の究明にあたることと、雲泥の差があるといわなければならない。 |
| (4) | 事故調の最も大きな使命は、調査結果の十分な公開であると思う。1993年10月5日の大阪ニュートラム事故の場合、大阪市交通局ニュートラム事故調査委員会は、同年11月詳細な事故調査報告書(中間報告)を作成した。このときの事故原因は、保安回路のリレー接点溶着であり、これと同じようなリレーの使い方はよく行われている方法であった。そのような類似使用例に対する警告を発したという点で、この報告書は大変重要な報告書であった。日比谷線脱線事故の原因がなにと特定されるのかあるいは特定されないまま終わるかもしれないが、いずれにしても、その調査経過と調査結果は、広く公開されなければならない。それによって初めて、この悲惨な事故の教訓を幅広く伝え、再発を防止することができるのだから。 |